人の悲しみの数だけ増える刺青。霊が彷徨う眠りの家。
PS2で発売された3部作最後の作品「零 刺青の聲」は、過去作の物語も関連したストーリーと怖さが詰め込まれて進化してきた面白い作品でした。
今作では現実世界と悪夢の世界を行き来しながら、一つずつ謎を解いていくのですが、徐々に現実世界にも悪夢の影響が出てくるところが怖いです。
零 zeroの「氷室邸」や紅の蝶の「皆神村」も再登場してくるので、前作をプレイ済みの方にはよりストーリーが楽しめると思います。
前作よりもグラフィックと操作性が向上していて、ストーリーも素晴らしく、最後には涙がこぼれるほど悲しい結末が待ってます。
それでは「零 ー刺青の聲ー」の魅力や楽しさを書いていきますので、興味がある方はお付き合いください。
かんたんなあらすじ紹介!
主人公は黒沢怜、雛咲深紅、天倉螢の三人。ある雨の日、黒沢怜と麻生優雨を乗せた車は事故を起こし、婚約者・優雨は帰らぬ人となった。
それから二ヶ月後、写真家を生業としている黒沢怜は、共に幽霊屋敷と噂されている日本家屋の取材を依頼された。アシスタントの雛咲深紅と共に撮影し、引き上げようとしていると死んだはずの婚約者の影を見つけた。
追いかけると風景は変わり、廃墟と化した日本家屋に迷い込んでしまう。その屋敷では霊が徘徊し、突如現れた全身に刺青が刻まれた女に囚われてしまった。
気が付くと怜の全身に刺青が浮かび上がり、幼い少女たちが手足に杭を打ち付ける寸前だった。その瞬間現実に戻り、撮った写真を現像してみると、そこには優雨の姿が写っていた。
その日から怜は悪夢を見るようになり、刺青のような痣は激しい痛みを伴い彼女を蝕んでいった。そして現実でも「眠りの家」の悪夢の現象が侵食し始める。
今作の楽しみ所!
3人の主人公がそれぞれ進めていく物語
今作は全14章あるストーリーを3人の主人公、黒沢怜・雛咲深紅・天倉螢を操作してストーリーを進めていきます。
それぞれのキャラには固有能力があり、黒沢怜は一時的な無敵回避技の「フラッシュ」、雛咲深紅は御神石のお守りの「スロー効果」と「チャージショット」、天倉螢は霊感が弱いので隠れて霊を回避したり、重いものを動かすことで進めない場所を行けるようになったりします。操作するキャラに合わせた戦闘を行うことが重要になってきます。
物語は現実世界と悪夢の世界を行ったり来たりするのですが、何度も迷い込むうちに現実世界にも影響が出てきます。
四ノ刻 【禍夢 ~マガユメ~】では「零 zero」の氷室邸が、五ノ刻 【神隠シ ~カミカクシ~】では「紅の蝶」の「皆神村」が登場し、今作の舞台「眠りの家」に繋がっていきました。
それぞれが見た悪夢はシンクロしていて、ほかのキャラが見た悪夢の内容は共有されています。
話が進んでいくと現実世界でも三人が合流し、物語の結末へ向けて謎を解いていくので眠りの家で行われている儀式の詳細がわかち、刺青の巫女の悲しい生涯がわかってきます。
零シリーズは本当にストーリーが素晴らしいので、全ての謎を読み解いていただきたい。
より人の姿に近づいた怨霊
零シリーズの特徴とも言える霊の存在なんですが、過去作に比べてより人の姿がはっきりとしていました。
ぼやけた印象の霊ではなく表情まで読み取れるほど作りこまれているので、よりイメージしやすく一層恐怖感を掻き立てられます。
そして難易度の高かった第一作目のように怨霊の動きが速く、全体的に強くなっているのでとても緊張感のある戦闘を行えました。
中でも全身に刺青がある刺青の巫女の怨霊や手足に杭を打つ少女の霊などは、見た目でも恐怖を感じるほど異様な表情をしています。
浮遊霊や地縛霊も何かしらの行動をしていることが多く、物語を読み解いていく内にその行動が悲惨なものだったり同情してしまうような行動をしていることが多いです。
鏡の前でずっと髪を梳いている女性。そして伸びた髪は壁に打ち付けられている・・・。この奇妙な行動も悲しい風習が生み出した物語なのでその雰囲気もしっかり出ていました。
恐怖の存在だである霊が、以前人間だったと再認識させてくれるほど作品の中で表現されているので、1人1人の霊たちにも注目してプレイしていただいきたい。
過去と現在、重なっていく悲しいストーリー
今作は全14章のストーリーがあるのですが、メインの黒沢怜意外にも「零 zero」の主人公、雛咲深紅、「紅の蝶」の双子の主人公・澪と繭の叔父にあたる天倉螢。
前作までを遊んだことのある方なら、今作の物語の深さが想像できるでしょうか?そして怜の苗字は黒沢・・・。
過去作との関連もありながら、今作では現実と悪夢を行き来しながら悲しい儀式の詳細が明らかになっていきます。
特に今作で登場する怨霊「刺青の巫女・零華」はとても悲しく、報われない想いで怨霊となってしまっています。
彼女が訴えかける「もう見たくない」「眠らせて」の言葉の意味を知ったとき、襲って来る相手とは言え助けたいと思ってしまうほど・・・。
恋人を亡くした気持ちで同調する黒沢怜と久世零華、兄を助けたい気持ちで同調する雛咲深紅と久世雨音、待ち焦がれた恋人を天倉澪に重ねた久世鏡華、時代は違えど同じ思いをした境遇が主人公たちを悪夢の世界に迷い込ませた要因となっています。
そしてその結末では婚約者をなくした主人公・怜よりも、刺青の巫女の悲しい人生に同情してしまう気持ちの方が強くなってしまうでしょう。
刺青の巫女・・・。彼女が体に刺青を入れていく理由。自身の運命を受け入れながらも恋心を抱いてしまった事で狂ってしまった人生を紐解いてみてください。
残念な所
読み物が多く、ストーリーが理解しづらい
今作ではストーリーを理解するためには、様々な場所で見つけた情報を読み解く必要があるのですが、数が多くて全てを読んでいくとテンポが悪く感じました。
しかも難しい漢字や昔の「ゐ」などの文字も使われているので非常に読みにくい。
雰囲気を出すためなのでしょうが、読めない言葉だと内容が頭に入りづらいです。
特に後半はかなりの量の文章を読んでいく事になるのでサクサク楽しみたい方はしっかり読まなくてもいいですが、「零」独特の作りこまれた世界感を楽しめなくなるので頑張って読んでいただきたい部分です。
眠りの家でさまよう霊たちにもとても悲しい物語があるので、全てを読み解いていただきたいと思います。
ムービーがもっと多かったらよかった。
今作は三人の主人公の物語が絡み合い、眠りの家の刺青の巫女の物語もしっかり作りこまれている物語は読み解く内容が多く、そのほとんどが読み物だったので理解しにくかったです。
重要な部分にはもちろんムービーがありますが、もっとムービーで作品の雰囲気を味わいながら楽しみたかったというのが正直な感想でした。
この作品がもし、リメイクされるならムービーシーンを増やして完成度の高いストーリーをわかりやすくしていただきたいと思います。
儀式の中で痛々しいシーンも多いので、重要なムービーシーンで恐怖感を味わってください。
エンディングムービーでは涙を流す可能性が高いのでハンカチを準備してくおいてくださいね。
日本ホラーの美しさを感じれる部分が少ない。
前作「紅い蝶」で紅が美しい印象を持ってしまったことに比べると、今回は華やかな部分というのがあまり詰め込まれていなかったような気がします。
日本家屋も暗く、古びた感じで恐怖感は掻き立てられるのですが、前作までの和風による美しさがあまり印象に残りませんでした。
前作で暗闇の中、羽ばたく紅い蝶の大群が美しく印象に残っているので、今作でも日本らしい美しさが閉じ込められてるともっと良かったと思います。
それでも和風ホラー作品として、日本独特の恐怖感や背筋が凍りつく恐ろしさはしっかり詰め込まれているので、その部分は体感していただきたいです。
まとめ
第三作目となった「零 刺青の聲」ですが、今作もとても恐ろしく悲しい物語でした。
零シリーズはただのホラゲーではなく、とても感動的な悲しい物語を体感させてくれる神ゲーだったと言えるでしょう。
刺青が体中に刻まれた理由や人を想う気持ち、怨霊となってしまった零華の境遇全てがとても悲しい理由でした。
そしてエンディングは涙が溢れ出てくるほど悲しく、達成感のある素晴らしいものでした。
全ての登場人物(霊たちも含む)に壮絶な物語があり、内容を知れば知るほどこの作品の深いストーリが入ってきます。
三部作の中で唯一ハッピーエンドと言っても良いのではないかと思いました。
前作をプレイしていなくても楽しめる作品ですが、前作までの悲しい最後を知っているとより満足出来る作品だと思います。
この作品に込められた恐怖に打ち勝って、感動のストーリーを体感してください!
最後までプレイした方にフルで聴いて欲しいED曲
エンディングで流れる曲は天野月子さん「聲」。感動のエンディングをより素晴らしいものにしてくれる名曲です。
クリアまで勧めた方はこの曲を聴くだけで思い出して心震えることでしょう。
前作「紅の蝶/真紅の蝶」で使われている「蝶」も天野月子さんが歌われていますので、そちらが好きな方も聞いていただきたいと思います。
ベストアルバムには「蝶」と「聲」の両方入ってますので、三部作全てをクリアした方はこちらの購入をオススメします。
(※上のリンクから視聴できます。)
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